AIとサステナブル・ビジネスについて、全ての企業が知っておくべき7つのこと

2018年1月11日
  • Dunstan Allison-Hope portrait

    Dunstan Allison-Hope

    Senior Advisor, BSR

  • Jacob Park portrait

    Jacob Park

    Director, Transformation, BSR

  • Michael Rohwer

    , BSR

本記事は2018年BSRがブログで初めてご紹介した破壊的技術とサステナビリティの接点についての考察です。(2018年1月11日付英文記事の翻訳)

AI(人工知能)は、かつてない強力な演算能力、デジタルデータ供給による飛躍的な成長、高性能のアルゴリズムなどの恩恵をもたらしながら急速に進化しています。世界の巨大テクノロジー企業は、AIの能力開発のために巨額の投資を行い、旅行、不動産からファッションに至るまで多くの企業がAIによるサービスの市場導入にしのぎを削っています。

AIは潜在的に、ヘルスケア(診断技術の向上)、交通(自動走行車)、法の執行(不正検出の向上)などを通じて多くの社会的恩恵をもたらします。その一方でAIは、無差別性(アルゴリズムによるバイアス)、プライバシー(個人情報の悪用)、子どもの権利擁護(インフォームドコンセントの欠如)や労働者の権利(機械の導入による大量の労働者解職)などに関する、新たな社会的リスクをもたらします。

完全な網羅とはいえませんが、私たちはメンバー企業がAI戦略を策定する上で、以下7項目についての考察が不可欠であると考えています。

1 AIは技術系企業のみならず、すべての業界に関係する

AI開発はシリコンバレーが主導しています。そのため、民間企業によるAIの社会的意義についての議論は技術系企業によるものが多数派を占めていました。しかし、金融、ヘルスケア、インフラ系企業、公共事業者や小売業など、その他の業界の企業が、AIが自分たちのビジネスモデル、従業員や顧客にどのような影響を与えるかを理解することが急務です。

2 人権と社会的道徳へのAIの影響が特に重要

AIの開発と運用にも適応されなければなりません。「もっとも深刻な潜在的影響は何だろう」、「その影響を受ける社会的弱者はどのグループだろう」とか、「救済措置をどのように確保するか」などの課題に真に取り組みながら、企業はAIに対して「human rights by design*」アプローチをとっていく必要があります。

*破壊的な技術革新が急速に進む中で、商品、サービスや技術の開発で充分な基本的人権への配慮を取り入れるための手法

3 環境問題も重要課題

AIに対して相当の道徳的、人権的な注意が向けられていますが、グーグル社がデータセンターの効果的な電力利用のために根本的改善を行ったように、AIに対する環境問題の取り組みについても大きなチャンスがあります。マイクロソフト社の「地球のためのAI」への関与が示すように、AIは環境問題の解決にも利用できるのです。同時にAIによって生み出されたデータプロセシングの需要が、エネルギーの使用量を大幅に増加させないようにすることも重要です。

4 リサーチ、商品開発、マーケティングチームがサステナビリティに関与することが不可欠

BSRの2017年「サステナブル・ビジネスリーダー」調査によれば、サステナビリティを実際に進展させ達成するために、社内のどの機能が重要かという質問に対して、24%が商品開発、13%がリサーチと開発、そしてわずか8%がマーケティングと回答しました。これらの部門は実際のAIの開発と展開について大きな影響力を持っているので、AIとサステナビリティに関する対話に積極的に関与することが極めて重要です。

5 企業はAIの複雑さについてわかりやすく伝えていく必要がある

AIは非常に複雑であるため、どの国でもその機能について理解しているのは企業内に集約されている限られた人々のみです。もし私たちがAIに伴うリスクを軽減し、その可能性を十分に発揮させたいのであれば、市民社会、権利保有者や社会的弱者に対して、AIの課題とその利用について、議論への参加を促さなければなりません。

6  AIに関する道徳理念や原則は迅速に策定されたが、実践には困難が伴う

AI分野が迅速にその原則を策定したことは注目すべきです。(米)電気電子技術者協会、ソフトウェアと情報業界団体、米国情報技術工業協議会、Future of Life InstituteはAIの道徳理念を公示しました。またPartnership on AI、Ethics and Governance of AI Fund、AI Nowなどの団体は、主要な課題について調査するために多大な労力を傾け、対話を促進しています。しかしそれらの理論を実践するためには、今後、現実の事例に対応した徹底した検討が必要となるでしょう。

7  AIの将来は不確実だが、今日行う決定は長期的な影響をもたらす

AIへの責任あるアプローチは急速な変化、不確実性や複雑性に対する堅固な取り組みを必要とします。AIが今後どのような開発や発展の経路をたどるのか私たちは正確に知ることができません。そのため、将来に対する異なった見解をあらかじめ準備して、今日の決定によって引き起こされる長期的影響を熟考しなければなりません。私たちが取り組んでいるFuture thinkingは、同時に戦略的展望でもありますが、将来起こりうる複数の可能性を調べ、今後展開されうる様々な結果を考慮して、方向性を定める方法を提供しています。

BSRの最新レポート「サステナブル・ビジネスの将来について」で、私たちは3つの重要な課題、すなわち技術と倫理、人権が交差するポイントが、ビジネス課題の中心で最重要項目であるとしました。それは単にサステナビリティに関する理由だけではなく、これらの課題が今後ビジネスの業績と戦略の中心になっていくと考えるからです。もしAIが公共的利益に貢献する方向に進化しなければ、私たちは将来多くのものを失うでしょう。私たちはAIを確実に良い方向に発展させるために、皆さまと一緒に取り組んで行きたいと考えています。

Let’s talk about how BSR can help you to transform your business and achieve your sustainability goals.

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