BSR年次総会2017報告

2017年11月28日

10月24日から26日、米国カルフォルニア州でBSRの年次総会が開催され、世界30カ国・地域以上から約350企業・団体から約700名の方々が参加されました。この報告はBSRの一員として簡単に会議内容のサマリーをお伝えするとともに、会期中に印象に残ったことなどもお伝えします。

今年のテーマは「HOW BUSINESS LEADS(いかに企業がリードするか)」で、1992年に発足したBSRの25周年記念総会として、世界から持続可能なビジネス分野の主要リーダーが集まり、活発に発表や議論が行われました。総会は、まずBSRのプレジデントでCEOのアーロン・クレマーの開会の辞で始まりました。2017年は、気候変動に関する国際的な動向や不安定な政治や国・地域間の状況が生んだ難民問題など、サステナビリティにとっては課題が多い年でした。その一方、企業が積極的にパリ協定への支援を示し、気候変動への対応策を明確に示すといった前向きな面も見られました。BSRが発足した25年前と、今日の企業の取り組みを比較し、多くの進捗がみられることや、BSRがリードする形で発足したサプライチェーン上のサステナビリティ課題に対応する電子業界の基準となるEICC(現:Responsible Business Alliance)や言論の自由やプライバシーについて企業、学界、NGOを中心に活動するGNI(Global Network Initiative)などの協働イニシアティブによって、持続可能な社会の実現に構造変革がもたらされたことはこれまでの実績といえるでしょう。クレマーは、これからの課題として「気候変動へのレジリエンス、技術革新における倫理・人権への配慮、オートメーションによる雇用と働き方への影響」といった点が重要になるとのBSRの視点を紹介しました。

基調講演として登壇した米国元副大統領のアル・ゴア氏は、気候変動が現実のものであることを、最近米国を襲うハリケーンが海面温度の上昇によってもたらされていることなどから説明し、企業が気候変動に取り組む重要性について語りました。また、「気候変動(気候変動への対応や製品・サービス提供)は、最大の投資機会」として、企業のさらなる積極的な取り組みを呼びかけました。

3日間にわたって多くの講演や、セッションが開催される中で、上がってくるキーワードは、「気候変動、ビジネスと人権、未来志向、女性のエンパワーメント、AIやテクノロジーの影響、経済や機会の不平等、オートメーションによる雇用への影響、包含性(インクルーシブネス)、構造的変革(システマティック・チェンジ)、コラボレーション」といったものでした。

特にスピーチの中で驚いたものは、マイクロソフトのプレジデントでチーフ・リーガル・オフィサーのブラッド・スミス氏による「Responsibility with Digital Age」[AN1] です。同氏は「マイクロソフトは、ビジネスが社会に与える影響として、プライバシー・言論の自由といった人権課題や、オートメーションやデジタル化による雇用への影響による不平等への配慮といった課題を認識している」と発言し、「私たちはそれらの課題に積極的に取り組んでいく」と述べました。企業の対外的な発言としては思い切った内容だったと思いますが、同氏は「そういった課題へのマイクロソフトの対応が社会への貢献でもあり、ビジネス創出の機会でもある」と明確に述べられていました。サステナビリティ活動の中に、Advocacy(擁護・主張)という分野がありますが、アメリカやIT業界を代表する企業トップによる積極的な発言に、企業のAdvocacyの中身が変わってきたかもしれないと思わせる出来事でした。

また総会を通して注目が集まった「AIやテクノロジーの倫理・人権課題」や、「オートメーションによる雇用への影響」については、日本ではまだあまり話されていませんが、影響を受ける人々に向けて新たなスキルをつけるためのトレーニングの必要性などの興味深い議論も行われていました。

今年の年次総会は、以下のリンクから重要かつ興味深いスピーチがフルバージョンで視聴できます。英語の字幕とともにご覧いただき、ぜひ、現地で熱く盛り上がった様子を実感して頂ければと思います。

来年の年次総会は、11月6日~8日まで、米国ニューヨークで開催されます。今年、参加の機会を逃された方は、是非来年参加されることをお勧めいたします。

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