過去10年間サステナブル・ビジネスは大きく進展しました。気候変動対策とSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に向けてのグローバルな複数関係者のコミットメント、バリューチェーンを取り込んだ組織的改革の協業や、より持続可能な世界に向けた企業と投資家の実践は大きな成果をもたらしました。今回BSRとグローブスキャン社が実施したState of Sustainable Business 2018 Survey(サステナブル・ビジネスの現状調査2018) は、これまでの企業活動による大きな進展の証であり、また急速に変化する世界への対応に備えて、企業がこれからの10年に向けて進めるべき準備を検討するための手がかりを示しています。
発表された調査結果には、60%以上を占めるBSRグローバル・メンバーシップ・ネットワークのグローバル企業152社からの回答が含まれています。この結果は世界の最も影響力のある大企業でサステナビリティやCSRを担当する実践者たちによる視点と今後の展望を示したものです。
10年目にあたり、グローバルな課題が変化している事実を受けとめて、BSRは注視するサステナビリティに関する優先順位のリストをアップデートしました。興味深いことに、「倫理・公平性」と「多様性・多様性の受け入れ」の2項目が初めてリストに入り、今後12カ月のサステナビリティの取り組み課題としてトップ2の優先項目となりました。この2項目は企業にとって長年の課題でしたが、トピックスとして世界で注目をされているためか、急速にサステナビリティ課題として捉えられるようになりました。
「気候変動」と「人権」は、過去10年の調査を通じて主要な優先事項でしたが、今回もトップ4に入りました。「公共政策」に関する課題については興味が低く、3分の1にあたる回答者が「公共政策」の枠組みを低い優先順位に位置付けています。わずか11%が新たなグローバルの機会と課題の対応に向けて、政策の枠組みに影響を及ぼしたいと回答しました。問題の組織的な本質を考えれば、このことは意義ある影響力の行使に対しての制約となるかもしれません。サステナビリティ実践のアプローチの一環として、企業が持つ影響をどのように活用していくのか再考すべきでしょう。
また、長期的な成功を見据え、よりレジリエントな(変化への対応力に富む)ビジネス戦略を策定するために、調査結果から企業が世界のメガトレンドを予測し対応していることが見て取れます。人工知能のような破壊的な技術革新、データの機密性やその管理に関する懸念や気候変動の影響は、明らかに将来のビジネス戦略を方向付ける上でのメガトレンドです。
86%のテクノロジーとメディア企業が「AI・オートメーション」を最も影響力のあるメガトレンドと回答している一方、他の業界は半数強の企業がそれらをトップ3の重要トレンドと評価しているにすぎません。そして今日メディアを賑わせているにも関わらず、「データの機密性」は、全体として企業の重要トレンドですが、消費者企業にとっては3分の1以下が優先的項目とみなしているにすぎません。非技術系業界の企業は、社会全般に重大な影響を与える革新的技術により引き起こされる結果について十分に理解し、そのための準備をおこなわなければなりません。BSRの最近の調査結果報告書「Artificial Intelligence: A Rights-Based Blueprint for Business」では様々な産業がどのような取り組みを始めるべきかについて取り上げています。
さらに20%以下の企業のみが地政学、不平等の拡大、二極化と集団人口移動をメガトレンドのトップ3に挙げています。これらは二次的なトレンドあるいは政治の範疇とみなされているのかもしれません。しかし自動化、人工知能、気候変動が雇用と社会の混乱を引き起こし、政府を機能障害に陥らせることを想定すると、ビジネス・オペレーションの将来を具現化する上で、これらのトレンドはたいへん重要であると考えられます。
最も興味深い調査結果はサステナビリティ実践者の4分の3が「世界的な大きな潮流(世界的なメガトレンド)に取り組むためには、サステナビリティが適切にビジネス戦略に取り込まれなければならない」と回答していることです
最も興味深い調査結果はサステナビリティ実践者の4分の3が「世界的な大きな潮流(世界的なメガトレンド)に取り組むためには、サステナビリティがビジネス戦略により適切に取り込まれなければならない」と回答していることです。あるエグゼクティブはBSRレポート「持続可能なビジネスの再定義」のインタビューの中で次のように述べています。「過去10年から15年間、多くの大企業はサステナビリティに取り組み、それなりの成功を収めてきました。でも私たちは木の下の方にある果実を摘んだにすぎません。次の段階はより困難を極めるでしょう。それは私たちが何を製造し、何を購入するかということです。そのことは投資決定や商業的業務の核心に影響を及ぼすのです」
戦略、価値創造(Value Creation)やバリューチェーンとの協働など、コアなビジネス活動と比較して、企業のトップによる積極的な発言や透明性の確保については、わずか11%と15%の回答者のみがトレンドに対する重要な行動だと評価しています。中核となる戦略への注力については、ヨーロッパが86%、その他の地域が89%であるのに対して、北米は比較的低く64%が重要な機会と評価するにとどまりました。
戦略企画部門が参画することの必要性の認識は、この1年間で23%から33%へと高まっていますが、サステナビリティ担当者はこの実施に苦労しています。3分の1以下の回答者が戦略企画部とうまく連携していると思うと回答しました。企業のレジリエントなビジネス戦略の策定と実施が推進されていくなか、私たちは来年の調査でこの数字が大幅に伸びることを期待しています。
今年の調査結果は、今こそ「ビジネスの青写真」を採用すべきであることをあらためて強調するものとなりました。より公正でサステナブルな未来の追求に向けて、ビジネスを再定義するためにニューヨークで今年11月に開催されるBSR年次総会にぜひご参加ください。
英文レポート(58ページ)のダウンロードはこちらです。
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