「AI・テクノロジーと倫理・人権課題」セミナー

2018年2月12日

グローバルと日本の潮流を業界の識者の解説で紹介

2017年12月11日、BSRは “AI・テクノロジーと倫理・人権課題―グローバルと日本の潮流” セミナーを、ソニー株式会社の協賛を得て開催しました。

近年、AI(Artificial Intelligence:人工知能)、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、ビッグデータなどのテクノロジーが急速に進化し、ビジネスのあり方や人々の生活は大きく変化しています。しかし一方で、技術進化が新たなリスクを生む可能性も指摘されており、企業の各部門はそうした課題を踏まえた行動が求められています。

こうした中で、BSRは、EICC(Electronic Industry Citizenship Coalition:電子業界CSRアライアンス、現Responsible Business Alliance)や、ICT分野の企業などで組織されるGNI(Global Network Initiative)の設立を支援するなど、10年以上にわたり多くのグローバル企業と技術進化がもたらす倫理・人権課題へのソリューション開発に取り組んできました。

本セミナーでは、AIや機械学習が社会に与える影響について研究され、本分野での第一人者である理化学研究所の中川裕志氏にご講演いただき、その後BSRのICT専門家が欧米での最新状況を紹介しました。会員企業や各種団体の皆様にご参加いただき、活発な意見交換も行われました。

アジェンダ

  • AIにおける倫理と社会的影響
    • 理化学研究所 革新知能統合研究センター プライバシーと社会制度チーム
    • チームリーダー 中川 裕志 氏
  • AI・テクノロジーと倫理・人権
    • BSRサンフランシスコ事務所
    • マネージング・ディレクター ダンスタン・アリソン・ホープ

 

AIの利活用における主要な倫理指針を比較解説

セミナーの前半では、理化学研究所の中川裕志氏からAIの利活用における主要な倫理指針について解説していただきました。

まず中川氏は、「説明責任」「プライバシー」「軍事利用」「自立的に稼働する人工知能が守るべき倫理」などが主要な論点であると指摘した上で、人工知能学会、総務省、米国Future of Life Institute、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers:米国電気電子学会)の指針やガイドラインの内容を比較しながら解説。総務省の「AI開発ガイドライン案」は、G7やOECDにおける国際的な議論のために策定された文書であり、例えばAI自身の権利の所在やAIネットワークなど、将来的な課題の提起もされている点が新しいとされました。またIEEEの「人口知能倫理基準」は、EAD (Ethically Aligned Design )として分野毎に議論が進行中で、デジタルペルソナ(AI代理人)や自分のID定義など、さまざまな可能性が議論されていることも説明されました。

 

米国におけるICT企業の取り組み事例を紹介

後半は、GNIの設立に関わり、現在はICT業界の倫理・人権課題の解決に取り組んでいるBSRサンフランシスコ事務所のダンスタン・アリソン・ホープが登壇。主に米国でのAIと倫理をめぐる議論や各種団体の動向について紹介しました。

米国では、マイクロソフトやフェイスブック、グーグルなどICT業界の有力企業を中心に、早くから倫理・人権課題への取り組みが進められてきました。その結果、GNIをはじめ、AIの安全・公正で、かつ透明性の高い利活用をめざす「Partnership on AI」など、さまざまな団体が組織されています。ホープは、「これらは法制化が進まないなかでも、企業がイニシアチブを発揮し、NGOや学会と協力して課題解決を図る先進的な事例である」と説明。Partnership on AIには日本企業からはソニー(株)が参加していることも紹介しました。

また、中川氏と同様、各団体のAIと倫理・人権に関する指針やガイドラインに触れた上で、それらで共通して取り上げられている課題として「人と社会に利益をもたらす解決策」「安全性」「非差別と公平性」「プライバシー」「表現の自由」「労働者と仕事」「子どもの権利」の7点を挙げました。そして、「企業は各課題に対して優先順位を付け、組織的に取り組んでいくべきである」と提言するとともに、BSRはそうした企業をサポートしていく述べ、プレゼンテーションを終えました。

 

セミナーでの質疑応答

当日、参加者と登壇者の間で交わされた質疑応答の一部をご紹介します。

Q) 米国だけでなく、世界各国の動向も教えてほしい。米国とほかの国で温度差や議論されている課題に違いはあるか?

A) 米国では歴史的背景から「表現の自由」に関する議論が重要視される傾向があるが、EUにおいては、「プライバシー」がメインテーマになることが多い。また、アジアのなかでも中国は、膨大なデータを集められる国ではあるが、それを中国政府が握ってしまうことに対する懸念の声も挙がっている。

Q)「Partnership on AI」には、企業のどのような部門の人が参加しているのか?

A)この団体は少数の企業が立ち上げ、急速に拡大した。当初、AIの研究・開発に関わる人が多かったが、現在は人権やサステナビリティの推進部門をはじめ、多様な部門から参加している。

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