ビジネスと人権:法律に関する5つの動き

2019年7月8日
  • Salah Husseini portrait

    Salah Husseini

    Director, Human Rights, BSR

  • Aimee Louise Bataclan

    , BSR

グローバル・サプライチェーンにおける労働条件から製品の道徳的な使用方法に至るまで、企業には人権保護に関する多くの対応が求められます。 また「国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」は、民間企業がそれらの影響を精査するための枠組みを提供していますが、人権対応に関する国内法は、国によって大きく異なります。

人権保護のアプローチに関する各国政府レベルの対応は一貫性を欠いており、企業、特に多国籍企業にとっては、今日の新たなビジネス環境において気候リスクや技術革新による破壊と同様に、真剣に取り組まなければならない事柄のひとつです。

他の多くの課題と同じく、企業が抱える人権問題は、コラボレーションによって多くの成果を得ることができます。そのためBSRは2012年に「人権ワーキンググループ(Human Rights Working Group:HRWG)を設立しました。この協働的取り組みは、企業に実務レベルのガイダンスと、ビジネスと人権の専門家によるグローバルコミュニティーを提供することで、企業の「国連ビジネスと人権に関する指導原則」の実施を支援するものです。この春、ニューヨーク、ロンドン、東京で開催された「人権ワーキンググループ 」の会議では、様々な分野の企業40社の代表が集まり、最も差し迫った問題について共に検討しました。

この春の「人権ワーキンググループ 」では、子どもの権利から紛争地域のビジネスによって生じるリスクに至るまで、さまざまなトピックが議論され、その内容は『人権の考察:「人権ワーキンググループ」春ミーティングでのトレンド』と題したレポートとして公表されました。

特に焦点があたったトピックの一つに、各国政府レベルの一貫性を欠いたビジネスと人権に関するアプローチがあります。ワーキンググループは次のような傾向を掘り下げて精査しています。

  • 英ヴェダンタ社訴訟とサプライチェーンの責任:
    子会社によって引き起こされたとされる損害に対して、親会社の英国鉱山会社ヴェダンタ社が訴えられた件に対する英国最高裁判所の判決(詳細: U.K. Supreme Court’s ruling in the lawsuit against British mining company Vedanta Resources)
    海外に子会社を持つ多国籍企業は、あらゆる業界においてこの判決についての留意が必要です。
  • 現代奴隷の状況下にある労働者と人権のデュー・デリジェンス:
    ますます多くの国々が、企業に業務とサプライチェーンに対する厳格なデュー・デリジェンスの実施を課す法制定を検討または採択しています。
  • 差別禁止法:
    世界的に差別を禁止する法律が増加しています。 以前はジェンダー差別などに関連する法規制を持たなかった国々がそれらを採択し施行するようになっており、グローバルな事業を展開する企業はこれらの動きに対して注意を払う必要があります。
  • 労働者保護:
    様々な業種において、ギグ・エコノミー(インターネット経由で非正規雇用者が企業から単発あるいは短期の仕事を請け負う労働環境)で働く労働者の保護が脆弱になっています。労働者保護向上のために、配車サービス・ライドシェア・アプリ企業に対して、運転手を請負業者ではなく従業員とみなすよう求める訴訟が起きています。
  • プライバシー:
    プライバシー保護は、ユーザーや顧客の機密データを保有し管理する企業にとって、ますます重要な課題となっています。

各国の人権に関する関心が変化していく中で、企業を取り巻く法的環境やビジネスのオペレーション環境も今後変化していくでしょう。「人権ワーキンググループ」 は、あらゆる業界の企業と人権の専門家が集まり、この分野の差し迫った問題や新たな課題について話し合うユニークな場です。このコラボレーションによって育まれたグローバルコミュニティーでは、知見の共有にとどまらず、参加者それぞれが得た重要な学びを自社に持ち帰り、ビジネス戦略に生かすために役立てています。

「人権ワーキンググループ」への参加に関心のあるBSRメンバー企業の方々は、是非こちらにご連絡ください。

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