サステナブルフューチャーズ・ラボの設立について

2017年9月22日

Jacob Park

Director, Transformation, BSR

Jacob Park

, BSR

New York

世界的な異常気象現象からドナルド・トランプ氏の米大統領選の勝利、中国による化石燃料を使った自動車の段階的廃止決定に至るまで、大きく、そして急激な変化が世界を揺さぶっています。企業もその例外ではないようです。大部分の企業が根本的な変化に直面し、自らのビジネスモデルや顧客について、また、顧客にいかに価値を提供するか、競合相手はどこなのかといった点について再考を迫られています。ビジネスやサステナビリティの展望が塗り替えられつつあるのです。

こうした変化は、その速度と範囲が計りきれないばかりか、一つひとつの変化が互いに絡み合っているため、驚くほどの複雑さを呈しています。例えば、衣類の生産現場のオートメーション化は、製造分野への影響にとどまらず、国際的な開発の仕組み、グローバル・サプライチェーン、人権、小売業分野などにも多大な影響を及ぼしました。

BSRが最近開催した「Responsible Retail（責任ある小売業）」シンポジウムにおいて、オートメーションが小売に与える影響について議論するなかで、コーナーストーン・キャピタル・グループのディレクター兼アナリストであるセバスチャン・ヴァンデルザイル氏は、「2025年までには現在の状況は一変し、その姿は私にも想像がつかない」と述べています。

未来思考の必要性

このような時代にあっては、過去の事実から予測して将来の計画を立てる企業は成功することは難しいでしょう。世界の変化がどれ程目まぐるしいか、一例を紹介しましょう。米国のエネルギー情報局は4年前、世界の石炭消費量は2040年までに39％増加すると予測しました。ところが同局は今年、この数値をわずか1％へと下方修正したのです。

組織がこうした変化の激しい時代を生き抜き、発展を遂げるためには、急激な変化、不確実性、そして複雑性に対処する術が必要になります。そのための一連のツールを提供するものが「未来思考」であり、別名「戦略的洞察」とも呼ばれます。地平線上に現れる変化の兆しをとらえ、起こり得る複数の未来像を検討し、混乱も勘案しつつ進路を描き出す体系的な手法です。

調査：ホライズン・スキャニングとビッグ・データ

強力な戦略的洞察手法を支えるものは、ホライズン・スキャニングと呼ばれ、さまざまな領域にわたる体系的調査を通じて、新たに生じつつある課題、新たな脅威や機会、変化の兆しを発見するものです。BSRの新しいホライズン・スキャニング手法は、人間の知見を最先端の機械学習と結合するもので、新たな調査トピックスを生み、BSRがカバーするアジェンダを拡大させます。例えば、私たちは、オートメーションへの持続可能な移行、3D印刷におけるサステナビリティ関連の課題や可能性といったテーマに関して、アルゴリズムに潜む偏りや、ユニバーサルベーシックインカムがビジネスにもたらす意味合いなど、持続可能なビジネスに影響する新たな課題への検証も加えながら、精査していくことになります。

コンサルティング：シナリオ・プランニングと「未来への保障」

BSRの「変化の理論」において中核を成すのは、洞察を効果へとつなげることであり、サステナブルフューチャーズ・ラボは、より公正で持続可能な世界を創造していく上で、複数のビジネス機会を見出すためのツールをメンバー企業に提供します。

不確実性がこれほどまでに高まっている状況下において、企業がこうした機会を複数発見しようと思えば、単一の「予想される未来」にすべてを賭けるのではなく、起こり得る未来を複数想定することが不可欠です。そのための最強のツールの１つがシナリオ・プランニングであり、起こり得る未来をすべて勘案しつつ、戦略を検証・強化します。「MIT スローンマネジメントレビュー」誌に最近掲載された記事では、次のように指摘されています。「起こり得る未来に対する多様な見方をもとに目の前の可能性に対する理解を深める。それが賢明な経営法というものであり、企業経営者の多くが今この考え方にたどり着きつつある」

BSRはこのシナリオ・プランニングを、メンバー企業を対象に、戦略的洞察サービスとして提供していく考えです。また、マテリアリティ・アセスメント、ステークホルダーとのエンゲージメント、気候変動レジリエンス戦略といった既存のサービスに対して、変化する未来に対応できるための未来志向を取り入れた、新たなアプローチの共有を進めていきます。

戦略的コラボレーション

人類にとって最も差し迫った課題を解決するためには、単一の企業による単独での取り組みでは概して不十分です。サステナブルフューチャーズ・ラボは戦略的洞察／ホライズン・スキャニングを通じて、BSRの協働イニシアチブを強化し、新たな機会と可能性が潜む分野を発見します。また、シナリオ・プランニングは、協働イニシアチブの参加企業がさまざまな未来を検討し、好ましいビジョンを中心にして協力することを可能にします。さらにこのラボは、目的に特化した協働イニシアチブを立ち上げ、メンバー企業に人々との実践的エンゲージメントの機会を提供したり、未来を形作る課題を提示したりしていく予定です。