新たな協働(Collaborative Initiative)が、日本企業にもたらすもの

2019年9月23日
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    Asako Nagai

    Managing Director, Technology Sectors and Asia-Pacific, BSR

BSRには、現在24のCollaborative Initiative(CI:協働)グループがあり、さまざまな活動を行っています。CIグループへの参画に関して、会員企業の皆さんの中には、参加を迷われたり、得られる結果に関して懐疑的な方もおられるかもしれません。

そのような方々に、最初はBSR内の小さなCIグループから始まり、やがてグローバルなインフラにまで成長した2つの事例をご紹介したいと思います。

RBA(Responsible Business Alliance)旧EICC:

BSRは、2004年、ICT企業7社による電子業界共通のサプライヤー向け行動規範策定の仕組みの立ち上げに携わりました。同年のBSR年次総会でこのグループは正式に電子業界行動規範アライアンスとして活動を開始し、2008年にEICC(電子産業市民連合)が発足しました。

BSRは中立的なファシリテーターとして、EICCのガバナンス、管理、メンバーシップの成長支援を行い、サプライチェーンの責任に関する専門家として、紛争鉱物、過剰労働時間、水質、炭素排出など、業界で最も手に負えない問題へのアプローチを支援しました。現在EICCは、RBA(Responsible Business Alliance: 責任ある企業同盟)と名称を変え、発足時の7社から150社以上に成長し、収益5兆米ドル、従業員600万人を擁する世界の企業の責任あるビジネス慣行に影響を与えています。

GNI(Global Network Initiative):

2005年ICT企業のグループは、世界市場でリスクが高まっていた「プライバシーと表現の自由に対する人権」に関する調査支援を、BSRとハーバード大バークマンセンターに依頼してきました。これを受けてBSRは、民主主義技術センターと共に「コンセンサス構築プロセス」を実行し、2008年にGNIを発足、新しく「自由に関する原則と実施ガイドライン」を発表しました。同ガイドラインは、プライバシーや表現の自由に対するユーザーの権利侵害につながる政府の要求に対して、企業がなすべき方向性を提供し、企業、NGO、学者、投資家の間に人権問題に関する新しいコラボレーションの道を開きました。

発足から11年経った現在のGNIは、インターネット・テレコム分野で世界の主要12企業に情報を提供し、メンバーシップは、世界中の市民社会組織、研究者、投資家に広がります。GNIコミットメントは、企業のグローバルな規範になり、公共の透明性レポートなどの新しい革新的なツールは、業界のベストプラクティスとなっています。さらにGNIは、ネットユーザーの権利を脅かす法律案について発言し、プライバシーや自由な表現に影響を及ぼす公共政策や政府の行動に関してマルチステークホルダーを代表する声になっています。

RBAやGNIが、最初はBSRの小さなグループから始まり、当時まだ小さな芽の状態だったサプライチェーンやプライバシー課題が急速にグローバル社会全体に拡がり、その対応に業界全体のプラットフォームが必要となったように、急激に変化する現在の社会課題には新たな協働が必要です。そしてその協働に、欧米やアジア地域の企業とは異なる特性を持つ日本企業が、最初の議論から参画し、さまざまな可能性を試行することはとても重要と考えます。プロセスへの参加度合が大きいほど、協働の結果も、企業にもたらす価値も、より大きなものとなるからです。

2020年を目の前にしたこの機会に、日本企業の皆さまには、将来の社会課題に備えるために作られた CoLabへの参画や、現在24グループあるCI(協働)イニシアティブへの積極的な新規ご参加をぜひお勧めします。

CoLabは、将来に備え、現状を打破するために、広い分野でのコラボレーション提案を、クラウドソーシングを介して収集し、有望な提案を具体的に展開していきます。参加企業はBSRのグローバルネットワークを構築する多くの企業や、将来の方向性を示すリーダーたちと交流して、変革への革新的なイニシアティブを構想し、設計し機会を拡大することが可能になります。特に現在は、CoLabへのアイデアの呼びかけを行っています。

BSRのCI(協働)グループは、現在24グループあり、それぞれの課題ごとに活動を行っています。世界レベルでの社会課題について、日本企業が最新情報や知見を得ることはなかなか難しいですが、CIグループへの参加によって、そのような知見が得られるだけなく、他の参加者とともに議論し、試行に加わることで、より活動レベルとその効果を引き上げていくことが可能です。また、世界の企業との協働がこの活動の大きな特長ですが、日本企業の皆さまがより参加しやすくなるように、日本版のCIグループ展開の検討なども行っています。もし、何かご意見やご提案などあれば、併せてお寄せください。

Let’s talk about how BSR can help you to transform your business and achieve your sustainability goals.

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