2019年持続可能なビジネスの現状報告:重要な次の10年に向けて

2019年11月12日

2008年、BSRがGlobeScanと共に最初のサステナブルビジネス調査を開始したとき、これまでの3世紀におよぶ経済社会の基盤である資本主義の将来に疑問を呈するような、率直かつ実存的な対話に、影響力のある企業経営者や投資家が参加するとは考えられなかったでしょう。

2019年に見えてきた情景:影響力のあるCEOが「従来の資本主義はもう機能していない」と宣言し、利益とともに目的を重視する新しい資本主義を求めています。ビジネスラウンドテーブルで発言するCEOは、本質的に企業の目的の再定義を呼びかけ、株主の優位性を超えてすべてのステークホルダーに価値を提供できる「賢明な資本主義」の必要性を訴えています。

ここからは長年の対話と発展の結果として、BSRのグローバルメンバーシップの半数にあたる125社のグローバル企業による、第11回サステナブルビジネスの現状調査結果と、特に印象的な背景についてお伝えします。調査が開始されて以来、この調査は、世界で最も大きく影響力のある企業の中で、持続可能性の仕事に携わるビジネスリーダーの視点を取り上げています。

今回の調査は、2020年代に移行する直前、最後の年の調査であり、多くの企業が2020年を目標とするサステナビリティ戦略を策定する中で、何を考えているかを調べる意図がありました。調査に答えてくれたBSR企業の半数以上が、2020年を終了日、またはマイルストーンとするサステナビリティ戦略を持っていると報告しましたが、目標が達成できたと考えているのは45%だけでした。これは、私たちがグローバルな持続可能性目標から外れてしまって、目標が達成できないことを意味します。

今後10年間で、企業が劇的に持続可能性の目標を高めることが必要です

排出量増加の曲線を大きく修正すること、また基本的な人権を支えながらコミュニティと人々を貧困から救い出すことの緊急性を考えると、今ここでのメッセージは明確です。今後10年間で、企業が劇的に持続可能性の目標を高めることが必要なのです。

さらに、私たちが必要とする持続可能な変化を真に達成するには、企業のバリューチェーンに重点を置く必要があります。回答者の半数は、サプライチェーンにおける持続可能性への取り組みは効果的になっていないとしていますが、ブロックチェーンなどの新しいテクノロジーを適用すればより効果的になるとしています。

より興味深い発見の一つは、ほとんどの企業がサステナビリティをビジネスにより深く組み込むことを計画している一方で、長期的な価値創造を重視している企業は半数以下であり、政策決定フレームワークに影響を与えようとする企業はまだ少ないことです。

約半数の企業が、あらゆる問題について公共政策に重点を置いていると報告していますが、人権と気候変動が、包摂的成長や女性のエンパワーメントよりも注視されていることが分かります。この点は今後企業が取り組むポイントといえるでしょう。また、政策の枠組みに対する重要なビジネスの影響と、持続可能性の目標を達成する緊急性を考えると、これらの重要な問題についてより多くの企業が強く発言することが期待されます。

その他の注目に値する調査結果は、投資家の関心が企業の持続可能性への取り組み全体の主要な推進力になったことです。評判リスクと顧客・消費者からの要請は、企業のサステナビリティへの取り組みの最も重要な要因として特定され続けていますが、サステナビリティへの取り組みの主要な要因の1つとして投資家の関心を挙げた人は、過去1年間で大幅に増加し、トップ3に挙げた人は40%になりました。同じ数字は、2018年調査では25%でした。

持続可能性をビジネス戦略の中核に統合することは、より野心的な企業行動の機会であり続けます。半数以上の企業が、サステナビリティはCEOの5大優先事項の1つと答えるなど、CEOから継続的な注目があり、かつ投資家の関心が高まっているにもかかわらず、過去3年間の企業の報告書をみる限り、サステナビリティのビジネスの中核への統合度合は、ほとんど変化していません。

全体として、企業の66%が、2016年とまったく同じように、ある程度十分にサステナビリティを経営に統合していると回答しています。サステナビリティの戦略計画と製品およびサービスへの統合を追求しているとの回答は、調査対象企業の約半数のみとなっています。

気候変動、倫理と誠実さ、多様性と包摂、そして人権は、企業にとっての持続可能性の最優先事項です

調査結果からは、気候変動、倫理と誠実さ、多様性と包摂、そして人権は、2020年代における企業のサステナビリティに関する最優先事項であることが分かります。

しかし、それらの課題の中でも、2019年、気候変動の重要性への認識が大きく高まりました。回答者の50%以上が気候変動を今後非常に優先性が高い課題であると回答しています。企業のリーダーはどのようにしてCO2排出をネット・ゼロに近づけるかを模索し、気候リスクシナリオの分析を進めており、科学者や他の専門家、さらにデモ活動が示しているグローバルな温度上昇を1.5℃に抑えるための行動の緊急性をよく認識しています。  

Chart: climate change emerges as most significant issue

なお、企業の最優先事項としてのランキングにもかかわらず、この調査では、企業内でカーボンプライスを導入する企業の数の動きは最小限であることが明らかになっており、これにも注目が必要です。社内のカーボンプライスをすでに導入しているか、導入しようとしている企業はわずか31%です。さらに、二次サプライヤーも含むサプライチェーンを通じて気候変動の管理に注力できている企業は全体の3分の1にとどまっています。更に多くの企業がSBT(Science Based Target)を設定し、地球の温度上昇を1.5°Cに抑える世界的な取り組みの一環として、排出量の上昇カーブを大きく修正する必要があります。

企業は、ステークホルダーとの関係を深めることに関心を持ち始めています

最後に嬉しい変化として述べたいのは、企業がステークホルダーとの関係性を深めることに興味を持ち始めていることです。今年初めにBSRが発表した「ステークホルダーとのエンゲージメントへの5つのステップ」というレポートで述べたように、わたしたちは、投資家の関心が高まり、国際的な基準が広く認識され、社会の透明性が高まり、情報が超高速で共有されるデジタルメディア環境の時代に生きています。ステークホルダーへの関与はこれまで以上に重要であるため、企業が真剣に取り組んでいるという事実はとても良いニュースです。

サンノゼで開催されるBSR Conference 2019(2019年年次総会)では、The New Climate for Business(ビジネスの新しい環境)というテーマのもとで、ビジネス、市民社会、より広い持続可能性コミュニティのメンバーやパートナーなど、私たち自身のステークホルダーの方々とネットワークを持つことを楽しみにしています。2020年代の重要な10年に向けて、私たちは共通の課題とサステナビリティに関してより強化された企業行動の機会を議論したいと思っています。

*第11回サステナブルビジネス調査(The State of Sustainable Business 2019)のフルレポート(英語)のダウンロードはこちらからどうぞ。

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