-
Edwina McKechnie
, BSR
-
Charlotte Bancilhon
, BSR
長い間、2020年は未来であり、ビジネス目標と活動スケジュールの最終地点でした。 2020年に多くのサステナビリティ戦略と目標がそのゴールを迎える中で、企業は次の10年間のための新たなサステナビリティの優先的課題について検討する時期を迎えています。
BSRは、今年4月23日~25日に仏で開催された「サステナブル・ブランド・パリ」の場で、エイブリィ・デニソン社(Avery Dennison)、エビアン社(evian)、フォーティチュード パートナーズ社(Fortitude Partners)、マスターカード社(Mastercard)の代表者らと、2020年以降の戦略を構築するうえでのダイナミクスについて討議する機会を持ちました。
サステナブルな事業の展望は、エネルギー転換の加速、人工知能などの破壊的な技術、新たなビジネスモデル、地政学的変動の拡大、気候変動、そしてステークホルダーから寄せられる新たな要請などによって急速に変化しています。
BSRは、次の段階に向けての取り組みにはサステナビリティを軸とした強靭性に富む事業戦略を構築することが必要であると考えています。部分的にサイロ化されたアプローチと短絡的な成功を積み重ねていく時代は終わりました。今こそ、ビジネス、社会、そして消費者が密接に影響し合う現実を認識して、軌道をリセットしなければなりません。
BSRメンバーの1人はかつて「大半の大企業はこの10年から15年の間、サステナビリティに着手してそれなりの成功を収めてきましたが、それは大きな努力をしなくても達成できる目標、つまり木の下にぶら下がっているもぎ取りやすい果実を収穫したにすぎません」と語りました。 次の段階はより一層の困難が予想されます。企業が何を調達し、何を販売するかという企業の商業活動と投資決定に関する心臓部分に迫っていくからです。
一方、この機会は過去10年間私たちがサステナビリティ経営から学んだことを振り返るためにたいへん有効です。うまくいったこと、達成したこと、企業と社会にとって長期的価値を創造しながら、消費者ニーズを満たす方法を見極めるためにどうするべきか、これらを鑑みてBSRはメンバー企業と協力しながら2030年への戦略策定に向けて、以下の3つの課題を検討する必要があると考えています。
10年後の世界はどのようになっているのでしょう。そして2030年、企業の優先重要課題は世の中とどのように関わっているのでしょうか。
今後10年間で世界がどのように変化するかを考慮せずに、企業が2030年に向けた計画に着手することはできません。私たちは、これからの10年間に起こる混乱やイノベーションのすべてを予測することはできませんが、未来思考やシナリオ・プランニングを活用して長期的なサステナブル・ビジネス戦略を立案することは可能です。
未来思考とシナリオ・プランニングは、変化の兆候を識別し、将来、起こりうるシナリオを探りながら、2030年の企業戦略が変化する世界に適切かどうかを確認するための体系的な方法を提供します。シナリオ・プランニングは未来を予測するものではありませんが、私たちの視野を広げ、現在と未来についての前提を疑いながら、変化に適応して舵取りしていく能力を高める方法です。重要な点は、そのことが起こりうる未来の新しい環境下におけるビジネスを想定するために役立つことです。
BSRレポートDoing Business in 2030 を用いてサステナブル・ビジネスに影響を与える主な変化要因に基づき、皆さまのビジネスと顧客に影響する4つのシナリオ診断を行ってみてください。
有意義な2030年のサステナビリティ戦略と目標立案のために、サステナビリティ・チームは新たな能力を開発する必要があります。
消費者ニーズと欲求はどのように変化していくのでしょうか。ブランドは消費者と連携して、より持続可能なライフスタイルを実現できるでしょうか。
BSRメンバー企業の1社は、サステナビリティの取り組みに最も重要なことは、ビジネスの成長への道を確実にし、ビジネス上の利益を見出すことだと語りました。「消費者にとって(魅力ある商品は)サステナビリティではなく、健康や既存技術を陳腐化させる、といった別の言葉で表現されます。体裁の良い賞を受賞するためにサステナブルな新製品を開発するのではなく、消費者が必要と望む商品を世に出していくことです」
真に持続可能で強靭性に富む事業は、持続可能な開発目標(SDG)達成のコミットメントをコア事業戦略に組み込んでいます。BSRのメンバー企業は「事業をサステナビリティの課題解決に取り入れることは、企業にとって新たな収益構造を生み出す機会であること」を理解しています。これは、持続可能な開発目標(SDG)とサステナビリティを事業計画に統合することを意味します。より多くの企業は、持続可能な取り組みが消費者にもたらす価値と大きな社会的課題の解決に貢献する商品やサービスに対する消費者ニーズに注目しています。
過去、サステナビリティ戦略は、悪い影響を減らしながら通常のビジネスを継続することに重点を置いていました。しかし、他のBSRメンバー企業が言及しているように「製品、サービス、技術がプロセスや手段よりも重要であるにもかかわらず、私たちサステナブル・ビジネスの当事者は、プロセスに焦点を合わせ過ぎているのです。これでは市場ニーズとの重要な戦略的結びつきを見過ごしてしまうのです」
2030年に向けた戦略を全社的に推進するために、どのようなアプローチがより緊密な内部統合とビジネス価値を生み出すでしょうか。
「サステナブル・ビジネスの現状2018」(State of Sustainable Business 2018)によると、「消費者や顧客からの需要」は「企業の評判」に続いて、2番目に強力なサステナビリティ実行の原動力です。しかし、自社のサステナビリティ・チームがマーケティング部門と効果的に連携していると答えた企業はわずか34%、研究開発(R&D)部門とは29%、商品開発部門に至っては28%にとどまっています。
サステナビリティをブランド戦略やイノベーションに取り込むためには、これまで緊密に協力していなかったチームへの新たな働きかけが必要です。サステナビリティ・チームは、マーケティングと商品開発チームに対して、持続可能性によってブランド目標やイノベーションを達成するという的確なツールを提供することができるのです。
BSRのパートナーであるフォーティチュード・パートナー社は、ブランドマネージャーが抽象的なサステナビリティ戦略を消費者志向のブランド戦略へと変換するためのツールキットの開発などを盛り込んだ「マーケティング部と連携できるいくつかの具体策(some tangible ways to work with your marketing department)」をまとめています。 BSRメンバーの一人は、サステナビリティの特性をどのようにして商品開発の段階的なプロセスに組み込んだかを説明してくれました。「イノベーションを起こすチームはサステナビリティのガバナンスの仕組みの一部になっています。 私たちはまた、有益なアイデアを提供してくれる意欲ある起業家たちを支援するアクセラレーターとも手を組んでいます」
***
企業が今後10年にわたって、ビジネスとステークホルダーの価値を創造できるサステナビリティ戦略のための実践的なツールや方法があります。価値創造の機会を見つけ出し、内部変化を促して将来重要となる要因を特定する能力など、意義ある2030年のサステナビリティ戦略と目標設定を推進するために、サステナビリティ・チームには新たな能力の開発が求められているのです。
Let’s talk about how BSR can help you to transform your business and achieve your sustainability goals.